やることが多い日ほど、かえって何も進まないことがあります。焦りは、作業の速度ではなく、作業の順番を壊すからです。
焦りは「同時にやろうとする」形で現れる
締め切りが近いとき、私たちは無意識に複数の作業へ同時に手を伸ばします。メールを開きながら資料のことを考え、資料を触りながら会議の準備を思い出す。
一つ一つの作業は進んでいないのに、頭は常に働いているので、疲労だけが溜まります。夕方になって「今日は何をしていたんだろう」と感じるのは、たいていこの状態です。
作業を切り替えるたびに、頭は前の作業の続きを一度手放し、新しい作業の文脈を読み込み直します。この読み込みは目に見えないので、work量として数えられません。だから「働いたのに進んでいない」という感覚だけが残ります。
最初の一つを、紙に書いて固定する
対策は一つです。着手する作業を一つ決めて、それ以外を視界から外します。
おすすめは、頭の中で決めずに書き出すことです。付箋でもメモアプリでも構いません。書いた瞬間、その作業は「たくさんある中の一つ」から「いま取り組む対象」に変わります。
書くときのコツは、動詞まで書くことです。「A社の資料」ではなく「A社の資料の3ページ目を直す」。動詞があると、迷わず手が動きます。
残りは「後で見る場所」にまとめる
一つに絞ると、残りが気になります。これは自然な反応で、気合いで抑えるものではありません。
そこで、残りのタスクを一か所に書き出しておきます。忘れる心配がなくなると、頭はその作業を手放せます。「後で見る場所がある」という安心が、いま目の前の一つに集中させてくれます。
この置き場所は、凝ったツールである必要はありません。ノートの1ページでも、メモアプリの1画面でも構いません。重要なのは、そこを見れば全部あると自分が信じられることです。
通知を止める時間を作る
一つに絞っても、外から割り込みが来れば同じことです。
作業を始める前に、通知をまとめて止める時間を作ります。全部の時間である必要はありません。最初の25分だけ、と決めるだけでも変わります。焦っている日ほど、この25分が一日の流れを決めます。
午前中に終える一つを決める
一日全体の計画を立てるのが重くなる日は、範囲を午前中だけに狭めます。「午前中にこれだけ終わればいい」と決めると、一日を背負わずに済みます。
そして、その一つが終わったら区切りをつけて、次の一つを選び直す。この単位の小ささが、焦っている日を立て直します。
終わらなかった日の締め方
一つに絞っても終わらない日はあります。そのときに「今日もダメだった」で終えると、翌日の入口が重くなります。
代わりに、どこまで進んだかを一行だけ書き残してください。「3ページ目のグラフまで差し替え済み」。この一行があるだけで、翌日は思い出す作業から始めずに済みます。焦りが強い時期ほど、この引き継ぎが効いてきます。
割り込みが入ったら、戻る場所を残す
一つに絞っていても、急ぎの依頼は入ります。そのとき、いまの作業に戻れる形にしてから離れるかどうかで、その後の効率が変わります。
離れる前に、次にやる一行だけメモを残します。「ここまで直した、次は3ページ目のグラフ」。これがないと、戻ったときに思い出す作業から始まり、それ自体が面倒で別の作業に流れます。
焦っている日は、見積もりを疑う
焦りが強い日は、残りの量を実際より多く見積もりがちです。頭の中だけで数えると、同じタスクを何度も数えてしまうためです。
一度、残っているものを紙に書き出してみてください。書き出すと、思っていたより少ないことが珍しくありません。量が確定すると、焦りは「順番の問題」に変わります。