「うまくいっている自分」を想像すると、やる気が出そうな気がします。ところが研究では、思い描くだけで終わると、かえって行動量が減る場合があることが報告されています。

明るい空想は、脳をだましてしまう

エッティンゲンとメイヤーが2002年に発表した研究では、就職活動、試験、恋愛、手術後の回復といった場面で、肯定的な空想が強い人ほど成果が低い傾向が見られました。理由として挙げられたのが、努力量の少なさです。

思い描いた時点で、達成したときの気分をある程度先取りしてしまう。すると、実際に動く必要性が下がります。想像は、行動の燃料にもなれば、行動の代わりにもなってしまうということです。

願いと現実を、続けて見る

そこで使われるのが、願いと現実を対比させる方法です。手順は4つで、頭文字を取ってWOOPと呼ばれています。

  1. 願い:これが叶ったら嬉しい、を一つ
  2. 結果:叶ったときの、いちばんいい気分を具体的に
  3. 障害:それを邪魔している「自分の側の癖」を一つ
  4. 計画:「その障害が出たら、〜する」を一文で

大事なのは3つめです。ここに「家族が協力してくれない」「会社が忙しい」といった外側の事情を入れないこと。自分の内側にある癖(帰宅したらソファから動けない、通知を見ると手が止まる)を選ぶと、次の一文が作れます。

効果の大きさは、控えめに見ておく

2021年に発表されたメタ分析では、24の効果量・約15,900人を対象に、この方法の効果は小さめから中くらいと報告されています。紙を配るだけの実施より、その場で一緒にやる形のほうが効果が大きい傾向も出ていました。

つまり「やれば必ず変わる」ではなく「短時間の割には、方向を変えやすい」くらいの受け止め方が正確です。4分あれば一周できるので、費用対効果としては悪くありません。

このサイトが「差」を先に見せる理由

やる気でランナーが最初に「なりたい自分」と「今」を並べているのは、この考え方が下敷きになっています。理想だけを見ると気持ちよく終わり、現実だけを見ると重くなる。二つを並べて初めて、埋めるべき距離が具体的になります。

障害は、責めるためではなく設計するために書く

自分の癖を書き出す作業は、反省文ではありません。次に同じ癖が出たときの対処を先に用意するための材料集めです。

  • 「帰るとソファから動けない」→「ソファに座る前に、着替えだけ済ませる」
  • 「通知を見ると手が止まる」→「作業前に、スマホを別の部屋へ置く」
  • 「夜になると気力が落ちる」→「夜は判断しない。朝の自分に1行だけ渡しておく」

願いは、大きくても構わない

小さくまとめる必要はありません。「18時に仕事を終えたい」でも「英語で雑談できるようになりたい」でも、願いは願いのままで大丈夫です。

小さくするのは、願いではなく最初の一歩のほうです。願いが大きいまま、今日の一歩だけが小さい。この組み合わせが、いちばん長く続きます。

具体的な場面が浮かぶ言葉を選ぶ

願いを書くとき、「成功したい」「充実させたい」のような言葉だと、叶ったかどうかを自分で判定できません。判定できないものは、差も測れません。

  • 「痩せたい」→「階段で息切れしない自分になりたい」
  • 「勉強したい」→「英語で簡単な雑談ができるようになりたい」
  • 「部屋を片づけたい」→「休日に部屋を見て、嫌な気持ちにならない状態にしたい」

場面が浮かぶ言葉に置き換えると、今の自分との距離が目で見えるようになります。

4分の作業を、いつやるか

願いと障害を書く作業は、疲れている夜には向きません。判断を伴うからです。休日の朝や、通勤前のように、頭が比較的軽い時間に一度だけやっておきます。

一度書いたものは、しばらく使い回せます。毎日書き直す必要はありません。書き直すのは、願いが変わったときか、同じ障害に3回つまずいたときで十分です。